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30GBの新スタンダード「ahamoショック第2波」の影響【石野純也のモバイル通信SE】

2024-09-30

ドコモは10月1日にオンライン専用料金プランahamoのデータ容量を20GBから30GBに増大した。料金は月額2,970円。新規契約者だけでなく、既存のユーザーもこの容量アップは自動的に適用される。

また、大容量オプションを契約している場合のデータ容量も100GBから110GBに増加する。さらに、ahamoは国際ローミングが無料で、データ容量も30GBに増える。改定により、料金プラン自体の魅力が増した格好だ。

「20GBでは足りない」という現状に対応する形で、ユーザーのデータ使用量はここ数年で急増している。ドコモの代表取締役社長、前田義剛氏によると、前年は4割程度、データ容量が増加しており、今年度はそのペースで見込まれている。「今年度は8月時点で2割減のところまで来ている」とのこと。データ容量が20GBでは足りないユーザーが増えているのだ。

「ahamoのユーザーの声を調査したところ、年間の利用量の増加に対してデータ容量が不足していた」という。

結果として、ドコモの他の料金プランと比べると、「特にahamoの解約率が高かった」との調査結果が出た。データ容量が足りず、快適に使えないため、他社に移ってしまうユーザーが多かったとのことだ。

ahamoのデータ容量増大は、その引き留め策として実施されたものだ。実際、30GBへの増加で得感が高まり、他社のオンライン専用プランと比べても魅力は増している。

新規ユーザーに関しては、「中小容量のahamoやirumoでの取得が順調に進んでいる」ため、ahamoからの離脱の「脱糞」ができれば、純増数を再び増やすという期待が高まる。

20GBを「スタンダード」にしたahamoの衝撃は3年半の変革によって起きた。2021年に登場したahamoは、その料金の安さからユーザーはもともと、多くのライバル企業全体に対して衝撃を与えた。

大手キャリア他社は対抗を余儀なくされ、いざれ20GBプランを導入。これにより、このトレンドに巻き込まれて、競争が激化している。これを受け、MVNOも20GBプランを導入することになり、競争を強化することが求められる流れとなってきた。

ahamoは、2021年から2024年にかけてデータ容量の増加を計画している。2024年には約17GBに達する見込みだ。

一方、データ容量を増やす「大盛りオプション」は、80GBを追加することも可能で、月額料金は1,980円と高額である。単身で契約してもこの料金が適用されるのがahamoの魅力だが、料金面での割引適用の時間に関してはeximoと大きな差がなくなってきている。主要なahamoと大盛りオプションの間に、大きなギャップが空いていたとしても、10月1日からのデータ容量の増加はその隙間を埋めるための策である。

競合に合わせる影響「ahamoショック第2波」

前田氏が「攻めの姿勢をしっかり造っていく」と語っていたように、料金そのものまでデータ容量を一気に10GB引き上げた戦術は他社に対してもアグレッシブだ。

ahamoでデータ容量が足りないユーザーをターゲットにしたキャリアやMVNOは、その影響をもろに受けることになる。

7月に料金を改定したスフトバンクのLINEMOは、同社が1社であると同時に20GBの中容量プランがある「スタンダードプラン」を改定し、「LINEMOベースプランV」を導入していた。料金は20GBまでが2,970円、それ以上は3,960円に設定された。20GBを超えた場合もカバンでできるというのが、同料金プランの特徴だった。

そうして、ahamoが2,970円で30GBになったこともあり、一気に競争力が失われてしまった。また、LINEMOはahamo対抗策として、20GBを超えても料金が2,970円となり、10月1日に始めたが、こちらも新しい契約や料金プラン変更したユーザーは区分でかけて6カ月の期限。各年度でデータ容量が増えていく状態には、対策できていない。KDDIのpovo2.0も20GBで、このようになった。

MVNOはさらに深刻だ。9月に料金プランを改定したHISモバイルは、20GBをahamoより安く2,090円で設定し、30GBもahamoと同額の2,970円となることだった。これは9月までのahamoと同じデータ容量なら安く、ahamoと同じデータ容量なら多いという価格体制を打ち出していたことを示した。