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2025年の視点:「敵失」なしでは浮上できない円、政治学リスクの影響も=内田治正

2024-12-30

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東京都 11日=ミドル指標の算出対象通貨(ユーロ、円、ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)にドルを加えた7通貨を見ると、円は2022年に続き、2024年も最も弱かった。特に2024年に関しては、日本銀を除く18中銀が複数回の利下げを行った一方、日本銀だけ計3回の利上げを実施したにもかかわらずもあった。

このように円が弱い要因は、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利が、日本では政策金利、長期金利ともに依然としてマイナス圏にあるからで、他通貨よりも低い点に求められるようになる。特に2025年も海外中銀の利下げと日本銀の利上げ継続が見込まれるが、同様の状況が続く限り、円相場の自律的な反転は期待しづらい。

日本の実質金利の行方を考える上で、まずはインフレの持続性を見極める必要がある。日本では、消費者物価指数のうち、日本銀が参照している生鮮食品を除く総合指標が12カ月連続して目標の2%を上回っている。国内の総合的な物価動向を示すPCEデフレーターも前年比で12%上昇しており、今後もインフレ率が続くと観測されている。

今後については、2025年の関係する政策的な見通しを含み、利上げを促す要因が数多くある。決して円高がみられない現状は、政治的な要因や地政学的なリスクに強く関係していることを注視したい。例えば、2024年の選挙を控えた情勢なども影響を受け、円相場の動きが不安定になることが予想されている。

このような状況下で、日銀も安定したインフレ率のために政策を実行していく必要がある。在庫やコストの配分、企業の収益予測など多角的にアプローチを行い、日本の経済成長を支えることが求められよう。果たして、円はこの変化を乗り越えられるのか、大きな注目が集まる。