健康

2025年8月29日 日本のインフルエンザウイルスと抗ウイルス剤耐性株の現状

2025-09-01

著者: 海斗

日本で流行するインフルエンザウイルスの最新情報

2024年10月から2025年8月29日まで、日本におけるインフルエンザウイルスの流行と抗ウイルス剤耐性株の出現を追跡する研究が行われました。この研究では、バロキサビルに対する感受性低下に関連するPA遺伝子の変異や、オセルタミビルを含む神経アミダーゼ阻害剤に対する感受性低下に関連するNA遺伝子の変異を検出しました。

参加医療機関とサンプル収集

研究には7つの都道府県の外来医療機関が参加し、発熱、咳、のどの痛み、疲労などのインフルエンザ様症状を呈する患者から上気道サンプルが収集されました。迅速診断テストを用いて、A型またはB型インフルエンザの陽性を確認しました。バロキサビルで治療を受けている患者からは、治療後3〜7日でフォローアップサンプルが収集されました。すべての臨床標本は新潟大学に送られ、インフルエンザウイルスの検出、亜型の特定、PAおよびNAの変異の検出が行われました。

初期サンプル結果

114件の初回訪問サンプルのうち、69件(60.5%)がインフルエンザA(H1N1)pdm09、29件(25.4%)がA(H3N2)、12件(10.5%)がB/Victoria、2件(1.8%)が系統不明のB型インフルエンザと認定されました。A/Bの同時感染は確認されませんでした。

治療前サンプルにおけるPA/I38T変異の検出

サイクリングプローブRT-PCRを用いて、治療前に収集したインフルエンザAサンプルからPA/I38T変異の検出を試みましたが、69件のA(H1N1)pdm09および29件のA(H3N2)サンプルではいずれも検出されませんでした(検出率:0%)。

バロキサビル治療後のフォローアップサンプル

バロキサビルで治療を受けた9名の患者(すべてA(H1N1)pdm09)から、治療後3〜7日で上気道サンプルが収集されましたが、これらのサンプルではPA/I38Tの変異は検出されませんでした。

次世代シーケンシング(NGS)を用いた全ゲノム分析

全ゲノムシーケンシングが実施され、PAおよびNA遺伝子の耐性関連の変異を調査しました。初回サンプルのNGS分析で74件中、60件がA(H1N1)pdm09、10件がA(H3N2)、4件がB/Victoriaと認定されました。フォローアップサンプルでは12件中、8件がバロキサビル治療後、4件がオセルタミビル治療後のサンプルでした。

PA遺伝子とNA遺伝子の分析

初期サンプル中、バロキサビルに対する感受性低下に関連するPA遺伝子の変異は検出されず、オセルタミビル耐性関連の変異はA(H1N1)pdm09のうち4件から検出されました。その結果、NA/S247Nの変異が1件、NA/H275Yの変異が3件に認められました。フォローアップサンプルからは、2件が耐性関連のNA変異を示しました。

今後の分析と展望

今後の研究では、NA遺伝子の詳細な解析が計画されています。これにより、抗ウイルス剤に対する耐性のメカニズムをより理解し、効果的な治療法を確立していくことが期待されます。今後の流行に備え、最新の情報を追うことが重要です。