
科学
10万倍明るい太陽、巨大な鏡設計「ナノトラス」世界最新の設計では、何が観測できるのか?(朝日新聞Thinkキャンパス)
2025-09-15
著者: 結衣
太陽の10万倍明るい巨大鏡設計
巨大な銀色のドーナツ形部分が、東北大学の青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)に登場しました。2024年7月に新たに本格運用が始まる設計「ナノトラス」は、物質の構造などをナノメートルレベルで観測できる、「巨大な顕微鏡」とも言えるものです。これによって、世界的にも最新のX線を活用できる「次世代放射光設計」で、どんなものが観測できるのでしょうか。新しい物質創造の研究拠点としても、熱い注目を集めています。
次世代放射光設計の優れた特徴
次世代放射光設計「ナノトラス」の特筆すべき点は、1.8349メートルの円形部分と110メートルの直線部分からなるフォルムです。直線部分の加速器で光速に近いスピードになった電子が、円形の鞭をように回り、その時に放出された放射光X線を用いることで、細かい物質の様子を観測できるのです。東北大学「ナノトラス」共同推進機構の助教がこう語ります。「放射光設計は、いわば『巨大な顕微鏡』です。原子レベルで小さなものを見るためには、常に明るい光で照らす必要があります。ナノトラスでは、電子を光速近くまで加速することで太陽の10万倍の明るさのX線を得ることができ、物質の成分構造や、生物の細胞内部の動きなどを観測することができます。」
世界クラスの研究拠点の誕生
同じタイプの中では世界に5つしかない最新の第4世代の設計の一つです。電光の速さで戻る必要があるため、これのような巨大なドーナツ型の設計になったといいます。国立研究開発法人量子科学技術研究所(QST)や一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)が官民連携で整備を進め、運営しています。それにより、自治体や仙台市、一般企業の関係者も参加し、産学官が連携して本プロジェクトを推進しています。